意味
ボルツマン脳は、果てしない時間の中で、揺らぎによって偶然に生まれる、記憶を持った脳のことです。体も、地球も、太陽もない虚無の空間に、記憶を持った脳の働きが一つだけポッと発生します。
その脳には、子どもの頃の思い出や、今このページを開いたという記憶まで、生まれた瞬間に完璧に備わっています。
確率の考え方
138億年かけて秩序ある宇宙が育ち、私という存在、あなたという存在が生まれる。その道のりより、記憶を持った脳が一つ生まれるほうが、計算の上ではるかに起きやすい、と説明されます。小さな揺らぎは、大きな揺らぎより桁違いに起きやすいからです。
宇宙全体が整うのは最大級の巨大な揺らぎで、銀河一つ、太陽系一つ、地球一つだけが整う揺らぎのほうが、ずっと起きやすくなります。もっとも小さな揺らぎで足りるのが、記憶を持った脳が一つ、という形です。
観測者の大多数
宇宙の膨張が永遠に続くなら、星が燃え尽きたあとにも、果てしない時間が続きます。星が燃えている限られた期間に、進化によって生まれる通常の観測者の数は、限られています。一方、星が死に絶えたあとの延々と続く時間の中で、熱的な揺らぎによって生まれるボルツマン脳の数は、無限になります。
宇宙の歴史全体で観測者を数えると、進化で生まれた観測者はほんの一握りで、確率の上では圧倒的な多数派がボルツマン脳になる、という計算結果になります。
物理学での扱い
この計算に突き当たった物理学者は、自分が一瞬の揺らぎで生まれた偽物の脳ではないことを示そうとして、宇宙の寿命を計算してきました。ある理論モデルがボルツマン脳を大量に生んでしまうなら、そのモデル自体が破綻しているとして退ける、という使われ方もされます。
毎朝のボルツマン脳
脳科学の側から見ると、記憶は録画データの再生ではなく、思い出すたびに作り直されるものです。毎朝、昨日の記憶という構造物を、今ここで再構築して目が覚めます。心理的、機能的な意味では、人は毎朝ボルツマン脳として目を覚ましている、と言えてしまいます。
あなたの昨日の記憶は、いつ作られたものでしょうか?
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